スペインのクリエイティブエージェンシーGood Revel社を知ってるだろうか?3Mやテレフォニカなど名だたる大企業を顧客に抱える、いわゆるブティック型のクリエイティブエージェンシーである。社名に込められているのは、既成概念、思い込みに、Revelする事、反発すること、クライアントの常識にチャレンジしていくこと。素晴らしい名前である。

彼らのブログ Rebel Thinking は、私にとって、いつも気付きを提供してくれる貴重なブログだ。デジタルとUI/UXに強みがある会社なので、今後の企業と顧客の関わり方がどのように変わっていくのか、デジタルでどのような顧客体験を設計すべきか、いつも示唆を提示してくれる。

今回、Rebel Thinkingの中で、気付きの大きい記事があったので、要旨をご紹介したい。

Good Revelのデジタル化フレームワーク

Good Revelは、顧客のデジタル化に対応するための4つのフレームワークを提示している。

セルフサービス

企業の買い手はミレニアル世代(28~34歳)にシフトしている。Covidがこの傾向を加速させたことは間違いありません。McKinseyの最近の調査によると、B2Bバイヤーの3分の2は、調達プロセスにおいて、遠隔操作、eコマース、セルフサービスを好むと宣言している。

問い:私は何を求めているのか?
答え: セルフサービス(コンテンツ+eコマース)

コンシューマライゼーション

BtoBエクスペリエンスのコンシューマライゼーションは、とどまるところを知らない。BtoBのバイヤーは、BtoBでの取引においても、個人でアプリでUberを呼んだり、AmazonでECを利用したり、Slackでチャットしたりするのと、同じレベルの体験を期待している。このことが、UI/UXの重要性につながっている。Good Revelsでは、このチームが今、最も成長しているとのこと。

問い:どのようにしたいのか?
答え:コンシューマライゼーション(UX/UI+クリエイティビティ)

アドホック・エクスペリエンス

B2Bのバイヤーは、営業担当者には連絡を取らず、自分のペースで情報収集を行い、製品を探索するようになっている。バイヤーズ・ジャーニーのさまざまな段階に合わせて、異なるコンテンツを作成する必要がある。クライアントがまだ課題感を醸成している段階で、製品の詳細情報を押し付けるアプローチはもはや通用しない。

問い:いつ欲しいか?
答え: アドホック・エクスペリエンス(関心フェーズに合わせたコンテンツ+自動化)

アドボカシー

新しいデジタルB2Bバイヤーは、従来のような官僚的な調達プロセスにうんざりしており、自らが帰属する企業の活動やサプライヤーとの取引を通じて、社会に貢献する事を考えている。今までよりも、より人間を中心に考えているのだ。(どの会社と取引するかではなく、誰と取引するのかを考えている)

Good Rebelsでは、人間中心の組織は、顧客、同僚、市民という3つの側面を持つ説明している。株主の利益を最大化するだけでなく、すべてのステークホルダーの利益のバランスをとることが重要だ。このことが、従業員が企業の真の支持者(アドボカシー)になることが必要になっている背景である。人間中心の企業では、所属している企業の存在目的を伝えることがこれまで以上に重要になる。従業員は自分の仕事や雇用主に関連する専門的なコンテンツを個人のソーシャルメディアアカウントで共有したいと思うようになるのだ。

エデルマンは、最新のトラスト・バロメーターで、従業員のアドボカシーの高まりについて話している。そして、アドボカシーを育むのに地球上で最も適した場所とはどこか?それは、ソーシャルメディアである。雇用主は信頼できる情報源であり、人々は実在の人物(いわゆる中の人達)とつながりたいと考えている。

問い:なぜ欲しいのか?
答え: アドボカシー(人間中心-組織+ソーシャルメディア)

 

コンシューマリゼ―ション事例

 

1. セルフサービス事例

背景:グローバルな輸送機器(マテハン)メーカー。コロナの影響で売り上げが伸び悩んでいるが、代理店との関係があり、Eコマース戦略がうまくいっていない。中国の競合他社は、alibaba.comなどのサイトで直接販売を行っているため、検討の結果、D2B(Direct to Business)で、ECを行う事にした。

実施施策:

  1. ECサイトは販売代理店と共同で開設で、チャネルコンフリクトを解消。マージンはメーカーと代理店の折半。
  2. 従来は入手出来ていなかった最終顧客のデータを入手可能な状態にする
  3. 代理店管理を目的とした取引管理型CRMから、エンド顧客に対して、マーケティングメッセージを自動で送るためのCRMに移行。
  4. ブランドマーケティング(イベント、ロードショーなど)から、デジタルマーケティング、獲得志向のパフォーマンスマーケティングへの移行。
  5. デジタル化に関して、組織文化の大改革を行う

 

2. コンシューマライゼーション

背景:オランダのベーカリー向け食材メーカーが、ヴィーガンのトレンドを取り入れた新商品を発売。B2B2Cの難問を解決し、ベーカリーから最終消費者まで販売する必要性

検討項目:

ヨーロッパ20カ国を巻き込むにはどうしたらいい?(市場により、行うべきキャンペーンが異なる場合がある)ヨーロッパ市場をターゲットにしつつ、英語と地域の言語対応をどうバランスさせるか?(多言語・多文化対応)

実施施策

各国のベーカリーを巻き込んだインスタグラムキャンペーン。製品には、(インスタ映えする)鮮やかな色を使い、味わい深い食材をアピール。加えて、ベーカリーのポスターやスタンド、販売員のiPadなど、より伝統的なチャネルにも展開。

 

3. アドホック・エクスペリエンス

背景:スペインの携帯電話会社TelefónicaとのB2Bコンテンツマーケティングプロジェクト。読者が知り合いに薦めたくなるような魅力的なコンテンツを作りつつ、検索エンジン上での顧客との接触ポイントを以下に最大化できるのか?15カ国以上の営業部隊をどのように巻き込むか?

 

実施施策:
数年にもわたり、顧客のカスタマージャーニーを定義するワークショップを開催し、ペインポイントや感動的な瞬間を特定し、コンテンツプランニング戦略の開発に行った。

社外のブロガーと社内の専門家の両方に執筆してもらう。社内の専門家には執筆指導を実施。
認知度を上げるために、オフラインとオンラインイベントを開催。
SEO対策に対する費用を確保しつつ、UXにこだわりを持つ。
匿名のブラウジングと、ログインが必要なプレミアムコンテンツを組み合わせ、データ取得を促進した。
ログインした訪問者をSalesforceと連携させ、営業担当者が見込み客と接触する機会を持てるようにした。
営業担当者を編集企画に参加させ、執筆させた。
メールでのやりとりを自動化し、インセンティブ付きの特定のキャンペーンを設定して、沈黙しているユーザーを目覚めさせた。
Facebookのlook-alikeの活用とリターゲティング。

 

4. アドボカシー

背景:コカコーラ・ユーロパシフィック・ボトリング社。「従業員を主役にしたアドボカシーキャンペーンを実施したい。LinkedInでB2Bコミュニティとつながりたい。」社員が個人アカウントで会社のコンテンツを共有するようにするにはどうしたらいいか?会社の役員も含めて、このプロジェクトをバックアップするには?

 

実施施策:

15年以上にわたって、コミュニティとの関係構築を実施。
編集計画、ゲーミフィケーション戦略、創造性、コミュニティ管理
社内でコンテンツ共有をするための管理プラットフォームを利用
SNSのスーパーユーザーを特定し、トレーニングを実施。
ソーシャルメディア用の魅力的なビジュアルやビデオを作成
共有にあたっての一連のガイドラインを作成

 

まとめ

どうだろうか?参考になったのではないか?

私は、BtoB企業が陥りやすい罠が2つあると思っている。その1つは、プロダクトアウトマインドが強い、売り込みマインドが強いという事だ。2つめは、うちの業界はデジタルは関係が無い、と勝手に結論づけてしまう、あるいは、顧客視点が欠如したまま、DXブームに踊らされてしまっている点だ。

多くの調査データで裏付けられているが、顧客はすでにデジタルに移行している。自分が気づいていないだけで、競合他社に流れているのだ。最近、受注が減ってきているなと感じているなら、それはかなりの危険サインだと言えるだろう。

今回は、欧州企業の事例が多く出ているが、私が事例を読んで感じたのは、欧州企業は、デジタルを活用する事で、グローバル戦略を相当強力に推進しているという事実である。

日本のグローバル企業の多くでは、海外子会社が乱立しており、顧客から見ると、いったい何の会社なのか、どこの会社と取引すればいいのかわからないという状態になっている。これは、海外子会社が、一般に事業部と紐づいて設置されているからだ。しかし、損益管理の点ではいいが、顧客体験という観点では最悪の状態だと言えるだろう。

日本企業が米国を攻める、欧州を攻めるというのは、一般的に、競合他社のホームカントリーを攻めているのである。競合が確固たるブランド、確固たる営業網、代理店網を組織していて、潤沢な予算をかけてマーケティングをしている時に、事業部が乱立し、事業部ごとにマーケティングを実施している日本企業は、「飛行機の時代に竹槍で戦っているようなもの」なのである。

このような問題に切り込むには、やはり、トップが問題を理解し、トップが先導してこの問題に取り組む必要があるだろう。私が、かつて在籍していた富士通でも、海外の子会社が乱立する問題は、大きな課題となっていたが、当時の海外部門の管掌役員であった浦野さん(当時常務)が、強力なリーダーシップで、One Fujitsuの実現に向けて大きな努力を払っておられた。

かつて、ソニーがトランジスタラジオを持って、海外に売りに行った時は、製品を磨き、販売店を一店一店開拓するアプローチが有効であった。ところが今は顧客がデジタルで情報収集している。グローバル企業の多くは、申し訳程度の外国語サイトしか持っていない、あるいは、現地子会社に任せているので、ホームページが複数存在していて、しかも、検索しても出てこないという状態になってしまっている。要するに顧客から見ると、日本企業はオンライン上に存在していないのも同義なのである。「あれ、そんな名前の日本企業あったんだっけ?」という状態だ。

そして、このような状況に日本企業のトップは全く気付いていないのだ。

 

強調しよう。時代はデジタルだ。顧客はウェブで自ら情報収集している。この流れに対応できないと、事業の存続さえも危ういのではないか?海外は代理店がやっているから、海外拠点がやっているから、という言い訳が通用するのだろうか?上記の事例のように、海外の会社は、代理店を巻き込んだB2BEコマースに取り組んだり、従業員を巻き込んだSNSキャンペーンを実施したり、顧客向けのコンテンツマーケティングサイトを開設したりしている。デジタルの接点をどんどん海外の競合に奪われているという状態である。

 

最後に、Good RevelのFernando Polo(本ブログの執筆者)の言葉を引用してしめくくろう。

コロナは、B2BマーケティングのDX化を強力に推進した。デジタル・セルフサービスとeコマースは爆発的に増え、顧客の情報収集フェーズに焦点をあてたコンテンツマーケティングが増加し、しかも、顧客の関心に合わせてパーソナライズされていく。マーケティング・オートメーションは、バイヤーが最も必要としている時にリーチする能力を拡大する鍵になる。全体として、B2Bマーケターは、自社の製品の品質を褒めることよりも(売り込みアプローチ)、B2Bバイヤーエクスペリエンスにもっと焦点を当てるべきでしょう。もう、「私」「私」「私」の話ではないのだから。